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マクロビオティック(日本CI協会発行)2003年3月号に掲載された記事です。
 縄文以来の伝統食 麻の実で健康を回復した
マクロビオティック表紙

玄米菜食でも治らなかった長年のじんましんが解消

古くて新しい麻の実
昔から人々は穀物を食べてきましたが、主なものは「八穀」と呼ばれています。八穀とは、きび稲、黍、大麦、小麦、大豆、小あわ豆、粟、麻で、麻の実も穀物の一つに数えられています。麻の実は日本では縄文時代の鳥浜遺跡からも発見されており、古代から食用されてきたことがうかがえます。

中国では食用のほか薬としても利用され、副作用がなく効果の高い上薬に位置付けられています。最近、ヨーロッパやアメリカなどで、麻の実のタンパク質や脂肪酸などが健康に非常にいいとして、見直されています。麻の実が大豆や小麦ほど利用されてこなかったのは固い殻があるからですが、その固い殻をとりのぞく技術が、最近、開発されました。固い殻をとりさった麻の実ナッツはクルミのような味がして、そのままでもおいしく食べられ、料理も簡単です。

日本では戦前まで、麻が全国各地で栽培されていました。今でも地名や人名に「麻」の字がつけられるほど、麻という植物は日本人に愛されてきたのです。しかし、敗戦後の占領政策により、麻の栽培には厳しい許可が必要となり、そのため今ではほとんど見ることができなくなってしまいました。

■玄米菜食生活をさりに豊かに
健康のために玄米菜食をされている方が増えています。ただ、玄米菜食ではややもするとタンパク質が不足しがちです。タンパク質は酵素で分解されてアミノ酸になるのですが、麻の実には必須アミノ酸八種をはじめとする20種のアミノ酸が含まれています。

植物性タンパク質というとまず思い浮かぶのは大豆ですが、麻の実にもこの大豆と同じぐらいのタンパク質が含まれていて、その割合は意外なことに動物性タンパク源である牛肉や魚よりも多いのです。

ところで、大豆にはアレルギー性物質やタンパク質の吸収を妨げるトリプシン・インヒビターという物質が含まれているのはあまり知られていません。麻の実にはこのような物質が含まれていません。麻の実は大豆より消化吸収がいいのですが、それは麻の実のタンパク質がグロブりン(65%)とアルブミン(35%)の形で存在しているからです。麻の実のグロブリンはエデスティンと呼ばれ、体内のけっしょう血漿中にみられるグロブリンに似ているので吸収がはやくしかも利用しやすいのです。グロブリンやアルブミンは病原体に対する抗体の原料となるので、麻の実を食べれば免疫力がつき、病気にかかりにくくなります。

■麻の実で頑固な便秘も解消
便は人間が消化吸収した食物の残りかすであるばかりでなく、体の老廃物や毒素も含まれています。できるだけ速やかに排出しなければ、健康に悪影響を与えます。

麻の実は漢方では便秘薬として利用されています。それは麻の実に食物繊維、特に水に溶けない不溶性食物繊維が22%も含まれていて、それが潤腸通便作用を促すからです。麻の実の食物繊維は、腸内でほとんど消化されずに、水分を吸収して、元々の大きさの数倍から数十倍にも膨らみます。これがたくさんあるとカサが大きく、水分を含んだ、軟らかい便になるのです。このときに発ガン性物質などの有害物質の排出も促進します。

また、食物繊維を十分にとると、良い腸内細菌が住みやすい環境ができます。良い細菌の方が優勢になり、腸内を弱酸性に保つので、腸内の腐敗がおこりにくくなるのです。逆に肉食に偏りすぎて、繊維の摂取が少ないと悪い細菌がはぴこり、発ガン性物質を含む様々な有害物質がつくられやすいといわれています。

食物繊維は疾病予防や老化抑制、ガンの予防に効果があるとして見直されており、第六栄養素と呼ばれることもあります。一日最低17gの摂取が必要で、生活習慣病の予防のためには、約30g以上の摂取が必要といわれています。

この不溶性食物繊維はカロリーのとり過ぎを防ぎ、コレステロールなどの余分な吸収を防ぐため、糖尿病にも効果があるといわれています。

■麻の油が生活習慣病・皮膚病にも効果。
脂肪ときくとすぐに悪者と決めつけてしまいますが、脂肪は人間の健康になくてはならないものです。食べ過ぎると脂肪がついて肥満になるように、人間の体は食物から脂肪を作ることができます。しかし、人体が作れず、食べ物から摂取しないとできない脂肪もあり、それを必須脂肪酸と呼ぴます。麻の実には約30%の脂肪酸が含まれていますが、その約80%は必須脂肪酸で、すべての植物油のなかで最も多いのです。

必須脂肪酸はリノール酸(N-6系)とα・リノレン酸(N-3系)の2種がありますが、この2種の必須脂肪酸はホルモンと同じような働き方をし、しかも作用は正反対です。例えばリノール酸は血液を固め、α・リノレン酸は血液を柔らかくします。ですから、この二種の脂肪酸はバランスよく摂らねば、かえって体に害をもたらします。厚生労働省では4対1の割合で摂ることを推奨しています。リノール酸過多が生活習慣病やガンの原因になることが明らかになってから、リノール酸という言葉をほとんど聞かなくなってしまいました。現代人にとって重要なのは、α・リノレン酸なのです。

α・リノレン酸を摂ることにより、高血圧、肥満、痴呆症、糖尿病、高コレステロール血症、心臓病、結石症、アトピー性皮膚炎、アレルギー、潰瘍などの多くの現代病や生活習慣病の予防及び改善が期待できます。

また、α・リノレン酸は、青魚に含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)で注目される健脳成分と同じN-3系の脂肪酸ですので、麻の実油は頭にいいということもできるでしょう。

リノール酸の方は大部分の種子油に含まれていますが、α・リノレン酸を必要量含んでいるものとなると、亜麻(58%)、麻の実(20%)、菜種(11%)と大豆(8%)に限られてきます。

麻の油がこれらの油と比べて非常に特徴的なのは、γ・リノレン酸が2〜4%も含まれている点です。γ・リノレン酸は、生理活性物質の材料となり、血圧、血糖値、コレステロール値の降下、血栓を解消して血液の流れをよくする作用があります。
乳幼児やお年寄り、糖尿病でインスリン不足の人などに γ・リノレン酸の合成が十分でない傾向があり、麻の実を毎日、テーブル・スプーン1〜2杯摂取すると症状改善に役に立つことが明らかになっています。

麻の実油には必須脂肪酸をはじめとする多価不飽和脂肪酸がすべての植物油のなかで最も多く含まれていますが、これらの脂肪酸は胃腸管と粘膜を通じて血液循環に入り、さらに毛細血管を通って皮膚に達します。そこで細胞膜に取り込まれ、微量成分は細胞膜を保護していきます。この結果、皮膚の状態は明らかによくなります。最近の研究では、必須脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の摂取が人間の皮膚の生理に非常に重要であることが指摘されていますが、特に乾燥肌を治し、皮膚の老化を防ぐためには、リノール酸とγ・リノレン酸を摂取することが大切です。リノール酸は通常の食事で十分に摂取できますが、α・リノレン酸とγ・リノレン酸まで同時に摂取するには、麻の実油しかありません。

■ミネラルとビタミンをバランスよく含む
玄米が健康にいいのは確かです。ただ玄米に含まれているミネラルは、フィチン酸と結合しているため、炊飯して食べても消化吸収しにくいという欠点があります。玄米を少し発芽させれば、ミネラルはフィチン酸と分離して消化吸収しやすくなります。

一方、麻の実に含まれるミネラルはそのままでも消化されやすいものです。骨や歯の形成と成長に欠かせない「マグネシウム」、「リン」、「カルシウム」が多く含まれています。また、血液中のヘモグロビンの構成成分であり、酸素の運搬に重要な「鉄」やヘモグロビンの合成や骨や血管壁を強化する「銅」も多く含まれています。そのため、麻の実は、貧血の90%の原因となっている鉄欠乏に非常に有効であると考えられます。さらに味覚異常、脳機能活性化、生殖能力に関係が深い「亜鉛」も豊富にあります。

ビタミンの成分では、活性酸素からからだを守り、生活習慣病や老化を防ぐ「ビタミンE」、止血や骨粗しょう症の予防・治療に有効な成分として注目されている「ビタミンK」、赤血球や細胞の新生に不可欠な「葉酸」を多く含んでいます。

麻の実には現代人が摂取しにくいミネラル・ビタミン群がバランスよく含まれていることがわかります。タンパク質とアミノ酸のところでも触れましたが、玄米菜食に麻の実を少し加えるだけで、体質改善・健康増進にさらに大きな効果が期待できるでしょう。

また、麻の実は生命力が強いため、除草剤や殺虫剤を必要とせず、無農薬で栽培できます。消費者は環境汚染や残留農薬を心配する必要はありません。そして、食べてみるとわかりますが、栄養補助的に摂取するのではなく、おいしく日常的な食生活に取り入れられるのが最大の魅力でしょう。


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